臨床研修
1日目 診療に慣れる
2008年8月某日、いよいよ富士山研修の開始。富士宮口新五合目まで向かい、浜松医大からのDr、補助者(学生)と合流。いよいよ2泊3日の研修がスタートだ。
五合目からはブルドーザーで八合目まで。乗り心地はお世辞にも良いとは言えないけれども、スピードは抜群。
歩いて登ると3時間程度かかるところを、半分の時間で登れてしまう。
約1時間半で八合目着。診療所は山小屋の隣にある、銀色の建物だ。
普通に登山してくると、きらきら光ってよく目立つ。
まずは中にいる前任のDrから引き継ぎと、施設の説明を受ける。
2Fは診療ゾーン。診察室と処置室があって、ベッド横には酸素ボンベとマスク。あとトイレ。
1Fは居住ゾーンで、各人のベッド(個室!)と共用の居間がある。
医療器具としては、応急処置に必要なものは一通りある。喉頭鏡と挿管チューブも揃ってる。でもディスポ手袋がなかったり、点滴セットはあっても三活がなかったりと、一寸不自由な面も。今話題のこんな器具もおいてある。心電図モニターが置いてないので、「Vfはこれで診断します?」なんて相談を上のDrとしてみる。
パルスオキシメータが無いと聞いていたので、個人的にレンタルした器具(2週間で\6,300。高いと見るか安いと見るか…)で自分のSpO2を測定。
なんと82%! 驚いてしまったけれども、後から全員のSpO2を測ったら、みんな80台。
下山していく前任のDrを見送ると、程なく最初の患者さんが受診。
50代男性
- 主訴:頭痛・嘔気
- 現病歴:下山中、九号五勺辺りで主訴を自覚。既往歴は特にない。
- SpO2:78%
高山病の診断の下、酸素投与開始。10分ぐらいで気分が治ったので、ゆっくり下山することを勧めて診察終了。
診察終了後はしばらく受診は無し。本を読みながら待機する。といっても、酸素が少ないせいか本を読んでも全然頭に入ってこない。仕方がないので、診察室の窓から雲海を眺めて過ごす。
午後5時頃、隣の山小屋から夕ご飯が到着。ご飯とおかず3品、漬け物2品、あと味噌汁と温かい緑茶。
結構しっかりした量があるので、自分が高山病の時は食べ切れないことも。
夕ご飯の後、上のDrには休んでもらい、午前2時までは自分が診療を担当することに。合計で6人の患者さんが受診。幸い全員軽い高山病だったので、酸素を吸ってもらいつつ下山するように諭す。中には「やだ、絶対登る」などと納得しない人もいたけれども「登山は出来るかもしれませんが、注意力が低下した状態では下山が危ないです。」と説明。
この診療所で一番大変なのは、登ろうとする患者さんを説得することかもしれない。
午前2時。上のDrに診療を引き継ぐ。ほっとする一瞬。
外に出てみると、ご来光目当ての登山客が列をなしていた。ヘッドライトの列がはるか下まで延びている。