富士宮市立病院看護部ブログ
看護学生さんへ
わたしのこころに残ったこと
4A病棟 佐野京香
心に残っている辛かったこと悲しかったことは同級生の家族の死に立ち会ったことです。その日は、私は、日勤で緊急入院の担当でした。リーダー看護師から入院があることを知らされ入院の受け入れの準備をし、先輩と救急室に向かいました。状態がよくない方だと情報があり病棟へ戻りました。私は入院担当であったため来院されていた夫の所へ入院説明に伺いました。入院の説明を一通り済ませ、夫から息子も呼びたいと申し出がありました。医師から夫へ病状説明をした際、急変時は延命処置を行わないと決定したことを先輩看護師から聞いていたため、先輩看護師に確認し、お二人で面会できることを伝え面会されていました。私は、患者さんがいつ呼吸停止、心停止になるのかわからない状態であったためできる限り側にいられる時間を作ることが看護師として大切だと実感しました。数時間後、患者さんの心拍数が低下し病室に駆けつけると息子さんが困惑した様子でベッドサイドに立っていました。心拍数・経皮的酸素飽和度が低値になり、先輩看護師から息子さんに「もうすぐ呼吸が止まり、心臓も止まってしまいます」と伝えられました。息子さんから「もう何もしないんですか。このままなんですか」と動揺し涙ぐんだ声が聞かれました。その場にいた私は、夫から息子さんへ延命処置はしないことを伝えられていなかったんだと思いました。その後、先輩看護師が息子さんの対応をしてくださり、私は何も出来ずに涙をこらえ退室しました。家族の中で延命処置の話しがされていると思っていたため息子さんからの言葉にうまく対応する事が出来ませんでした。その後、患者さんは亡くなりエンゼルケアを行いました。
亡くなられた患者さんの息子さんは、私の同級生であり顔見知りでした。そのため、母親の存在が亡くなる辛さや目の前で延命処置がされないことがとても辛く私自身が涙をこらえきれなくなってしまいました。せめて息子さんに延命処置を行わないことが伝わっていれば少しは心の準備が出来たのではないかと思う反面、夫自身が延命しないということに実感がなく息子さんへ伝えることが出来なかったのだはないかと思いました。私に何ができたのか、どんな言葉をかければ良かったのか、何も出来ず直ぐに退室してしまった自分をとても後悔しています。
今回のエピソードを通じて家族間で延命に対する話しをしておくことは改めて大切なことだと実感しました。死に対してマイナスのイメージがあるため自身の家族間でもあまり話しはできていません。ですが、本人と家族が納得して最期を迎えられるように話しをしておくことは大切だと感じました。また、看護師として家族同士の間に立ち、対応する事も必要なのではないかと感じました。今回、何もできず立ち尽くしてしまいましたが、この経験を活かし、患者さんと家族、家族と家族の間に立ち、お互いが納得できる最期になるよう支援していきたいと思いました。今まで3回ほど看取りの経験をさせていただきましたが、入院して数時間後に亡くなってしまうことが多く、関係を深めることができないまま看取りとなってしまうため、悲しんでいるご家族にどのような声かけをしたらいいのかまだわかりません。ですが、最期に行うケアは、家族から口紅の好きな色を聞きながら行い、髪をきれいにまとめるなど、今自分にできるケアをお見送りする最期まで行っていきたいと思います。この貴重な経験を大切に、患者さんとご家族の立場になり考えられる看護師になれるようこれからも努力していきたいと思います。